豪雪地の建物にとってどの方向に雪を落とすか否かは重要な課題である。
隣地との関係、敷地内の動線などから、あるときは片流れ屋根、
あるときは本作のように雪止めを施した傾斜の小さいヴォールト屋根といった配慮が生じる。
雪止めとは雪の荷重と水の侵入との双方に長期間耐えることの宣明であるが、
二階を寡黙な壁面としながら一階正面のほぼ全面を開口としたのは、
浸水対応と同時に除雪を促す仕掛けかもしれない。
確かに屋根を分節すれば融雪水が通る雨樋を多く設けられるが、
中央部を軒の深い片流れで分節し、
四角の加え円と三角の開口部を用い塗装を施し、その内部でも梁材が貫く吹抜を設けて天井を青く塗装し、
またあえて斜交いを両脇の開口に見せたことには、
厳しい制約の中で遊び心に富んだ伸びやかな環境を提供するという設計者の意思がみえる。
文/天内 大樹 花美術館 Vol.52号 71頁 掲載 より抜粋
佐藤 英敏 Sato Hidetoshi
1950年新潟県生まれ。金沢工業大学建築科卒。
掲載/「建築採集記関東甲信越編」、「新潟の建築家16人 Part Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」。
現在、日本建築家協会会員、設計室サトウ代表。